大人の修学旅行「スギフジツアー 」 その魅力に迫る

大人の修学旅行

前回ブログで紹介した「スギフジツアー

何故、町の酒屋さんが企画するツアーに人が集まるかは前回のブログをどうぞ町の酒屋さんが主催する1泊2日のツアーに全国から人が殺到する理由

今回は、220日と21日の12日で行われたツアーの中身をご紹介。

北は北海道から南は香川まで、総勢16名の参加者が伊豆に集まりました。「家族で」とか「夫婦で」とかではなく、全員単独での参加。しかも平日に。

仕事の折り合いをつけたり、家族を説得するのは大変だっただろう事は容易に想像がつきます。

しかも北海道や香川から参加の方は、当日の集合時間には間に合わないので、前日に前泊をしてまで参加してくれました。

そこまでして参加したいスギフジツアー とは?

ツアー当日までのストーリー作り

前回のブログでも触れましたが、このツアーの肝は「ストーリー作り」

ツアー当日まで如何に参加者の高揚感を煽れるか?を主催者のスギちゃんと考えました。

参加する16名のほとんどは、SNSで毎日のように投稿をしているSNSジャンキー。主催者のスギちゃん、アシスタントの僕も然り。

って事で、やはりSNSの発信で当日までのワクワク感を演出しました。

先ずは参加者限定のFacebookページ。

こちらにバンバン情報を投稿していきました。

下見の様子

お昼ご飯の献立を事前に決めてもらったり

撮影ポイントの情報

当日の予想気温・服装のススメ

お酒の情報

料理の仕入れ・仕込みの様子

などなど、ホントに毎日のように情報をアップしていきました。スギちゃん、僕個人のSNSでも同様に、スギフジツアーの情報をアップ。

それは参加する人以外にも、このツアーに興味を持ってもらうことを目指して。内輪だけの楽しさにしてはいけないと。様々なSNSで発信する事で、参加者からの反応は勿論、その他の方からも様々な反応が得られる。

実際にツアーが終わった後には「来年は必ず参加します」「次回は参加したい」との声を多数いただきました。高揚感は参加者だけではなく、参加しない方まで浸透していたんだなと確信しました。

ちなみに参加者のメッセンジャーグループでのやり取りは、ツアー当日の1週間前から。これは、メッセンジャーグループでのやり取りは読み返すのが大変な為。Facebookページならフィードを戻ればすぐに見返すことが出来るので、その辺の配慮にもしました。必要な情報はすぐに手に入るように。

食事のストーリー

スギフジツアーでの12食は、僕のお宿、伊豆長岡温泉「はなぶさ旅館」にて。そして主催者からのオーダーは「富士山にまつわる料理」

料理担当としては

  • 如何に喜んでもらえるか
  • 如何に富士山を盛り込めるか
  • 如何に伊豆の食材を堪能してもらえるか

という3点に絞って献立を決めるようにしました。

このツアーの献立決めは、変更を何度も重ねました。

決めては変更するを繰り返して、親方と相談して、どのようにストーリー作りをしたら喜んでもらえるかを懸命に考えました。

ザックリと「富士山にまつわる料理」と言われても難しいものがありましたが、こちらもプロですのでプライドがあります。

先ずはこの会席の「肝」を何にするか?

和食の幹は「出汁」 ほぼ全ての料理に使われる出汁に僕は注目しました。

今回のツアーの出汁は全部「富士山の湧き水」で料理してみては?

料理長にそう伝えると「面白い!やろう!」となり決定。

裾野にある富士山の湧き水が汲める場所に行き、20ℓ以上も湧き水を汲んで来ました。以前この水を飲んだ時にビックリするほど美味しかったので、水の「旨さ」については保証済み。

当然各SNSにてその様子を投稿。

早速、鰹と昆布で一番出汁を取ってみると驚きの出汁に。

普段の出汁とは黄金色の澄み方が違うのです。

親方も「コレはすごいな・・」と驚くほどの違い。当然味も抜群に美味いのです。

先椀の吸出汁、鍋つゆ、出汁茶漬けの一番出汁と全てに、この「湧き水一番出汁」を使う事に。そして、せっかくなので「食前酒」ではなく「食前水」としてこの湧き水をそのまま飲んで頂く事に。

コレが大好評

スギフジ特別献立

前菜には旬のもの、伊豆のものを詰め込みました。本当なら湧き水で育つ「水かけ菜」を入れたかったのですが、仕入れができず。無念。盛り付けは普段とは勿論変えて富士山の器をメインに盛り付けました。

ちなみに当館のナマコは抜群の美味しさ。個人的には日本一美味しいと思っております。

下処理が甘かったり、包丁が厚いと硬さが際立ってしまいます。その部分に細心の注意を払い仕込んでおりますので当然といえば当然なのですが。

もちろん参加者の皆様にも大好評。今までで一番美味しいとのお言葉も何度もいただきました。

伊豆に来たら絶対食べてもらいたい「鯵」と「金目鯛」は初めに献立を決めていて、他は当日付近で良いものをチョイスした刺身盛り。

そのこだわりも勿論投稿済み。

本鮪や由比の桜えび、神頭烏賊で周りを固めました。神頭烏賊が特に好評でしたね。

伊豆の海鮮の素晴らしさを伝えられて安心しました。

煮物は牛蒡の印籠煮。勿論手作りです。牛蒡の中には鶏ひき肉と魚のすり身を射込んで。

お鍋は「ふじのくにポーク」という豚肉を使ったしゃぶしゃぶ。このお肉が抜群に美味しいのです。驚きなのは全くアクが出ない事。勿論臭みもなくバクバク食べられてしまいます。鍋出汁は湧き水のお出汁。白醤油ベースで作ったこのお出汁は、味がしっかりついているので、お肉をくぐらせたらポン酢やゴマだれなどは付けずそのまま食べられます。

焼き物は富士山サーモンの姿焼き。富士山の湧き水で育った虹鱒は臭みゼロ。普段はお刺身で出しているほど。今回は焼き物にて。ちょっと量が多くて食べられない方もいたのが反省点。

ご飯は当館自慢の山葵ご飯「伊豆まぶし」 僕が考案した3回美味しく食べられる山葵ご飯。天城産本山葵の美味しさを徹底的に伝える食べ方です。最後はお出汁でサラサラと。飲んだ後にも最高。

デザートもオレンジを富士山に見立てた「富士山釜」に。

みなさん、満足していただけたようで安心しました。

やはりストーリー作りが大切

参加者の多くは、はなぶさ旅館についてもご存知ですし、普段から交流がある方もいるので、多少贔屓目に見てもらっての高評価なのは存じております。

ただ、今回のツアーは僕らの「思い」を事前に伝えられたから、このような高評価をいただけたのかなとも思っております。

料理についても、どれだけの思いで献立を立てて、仕込みをし、湧き水を汲みに行ったのか。それを伝えてきたから、伝わったから、全員が楽しめるツアー、唯一無二のツアーとなったのだと思います。

正直天気が良くなく、富士山を拝めたのは2日間でたったの3時間ほど。「富士山を撮影するツアー」と謳っておきながら、この結果では普通はクレームもの。しかし、それでも「楽しかった」「富士山が見られなくても最高だった」と皆さんに満足してもらえました。

一番印象的だったのは、2日目のベアードビールタップルームへ行った際、参加者の方がテレビを見て

「あ!オリンピックやってたんだ!忘れてた」

という言葉。

このツアーはオリンピックを超えたんだと。16名の参加者にはオリンピックよりワクワクしてもらえたのだと。

観光業に携わる我々は、もっとやれる事・出来る事があるんじゃないか?

伝えられる事・伝わる事はもっとあるんじゃないか?

楽天トラベルやじゃらんネットにお金を払う前に、出来る事が沢山あるんじゃないか?

改めて「伝える」そして「伝わる」事の大切さを感じました。

普段からのブログ、SNS投稿もコレを意識して発信していこう。そう襟を正すツアーでもあったのかな。