あなたは旅の行き先をどう選ぶ?
旅行の目的地は、目的の場所・目的の宿・目的の人・目的のイベント・・などなど、その人によって様々だ。
例えば目的地が「ディズニーランド」だとしよう。
- 「ディズニーランドに行きたい」という人
- 「ミラコスタに泊まりたい」という人
- 「ミッキーに会いたい」という人
- 「パレードが見たい」という人
- 「ディズニーで働いている友達に会いたい」という人
- 「東京に来たのでついでに行く」という人
一人一人の理由は、それこそ一つ一つある。
では旅館ではどうだろうか?
「伊豆長岡温泉のはなぶさ旅館に行く」という人は?
- 以前泊まって良かったから
- HPを見て良さそうだから
- レビューが高いから
- 陶芸ができるから
- 順天堂病院に近いから
- 順天堂に家族が入院しているから
- 伊豆長岡温泉に行くのでたまたま
- 行きたい観光地に近いから
- 友達が働いているから
- 安いから
- 料理が良さそうだから
などなど。挙げていったらキリがないのだが、やはり一人一人の理由は違う。
旅館はその多様な理由の中から推したい部分を選択して売り出す。
「料理」「施設」「観光地」「サービス」とカテゴライズして。
これが今までの旅行のあり方。
これを根底からぶっ壊した人がいる。
伊豆長岡の酒屋「杉山商店」の杉山雅一さん・通称スギちゃん(以下スギちゃん)だ。
彼は去年、「スギフジツアー」という富士山の撮影スポットを巡るツアーを個人で開催した。
富士山メインの写真を上げている彼のInstagramのフォロワーは1900人を超える。
そんなスギちゃんの撮影ポイントを巡る旅。
Facebook、Instagram、Twitterと常に発信しているスギちゃん。
その発信に共感し、共鳴し、ファンになっていく。
写真、文章から伝わるものに惹かれていく。彼の魅力が人を惹きつける。
そう、彼が「旅の目的地」となっているのだ。
杉山商店という独自性
スギちゃんが経営している伊豆長岡の杉山商店は、他の酒屋とは一線を画す。
ただお酒を販売しているのではなく、スギちゃんの「好き」を販売している。
自分で作った日本酒や果実酒、焼酎などを販売したり、オリジナルの日本酒とオススメの干物をセットで販売したりと、独自のブランドを構築している。
そのブランド名が「スギフジ」だ。
ちなみに毎年、スギちゃんが撮影した富士山の写真をカレンダーにした「スギフジカレンダー」なるものまで販売している。しかも瞬く間に完売してしまうから凄い。
また、店内を改装工事して厨房を作り、保健所の許可をもらって店内でお酒と肴のイベントも月一で開催している。
精力的に「好き」を発信し、企画し、形にしている。そしてその企画するもの一つ一つに、「楽しませよう」という心が散りばめられている。
僕からするとやりすぎなぐらいに。
でもそこに人が集まる理由があるのだと。
そして忘れて欲しく無いのは、彼は酒屋さんだと言う事。
スギフジツアー
そんなスギちゃんが、昨年から企画・運営している「スギフジツアー 」は毎年2月に開催される。
- 2月は比較的天気が安定している
- 空気が澄んでいて富士山が綺麗に見える
- ふじさん(2・23)の日がある
という3つの理由かららしい。
初開催の昨年は、6人の方が参加されたようで、皆さん大満足の内容。
今年もそんな企画があるのだと聞いたので、軽い感じで「ウチでやります?」と聞いたら「是非!」との答えだったので、はなぶさ旅館で開催することに。
スギちゃんからのオーダーは「富士山にまつわる料理で」というなんともザックリしたオーダー。
こちらもプロなので、大体こんな感じかな・・なんて考えてたが、甘かった!
彼の「楽しませよう」という考えは凄すぎた。
先ずは情報をリリースするための写真を撮りに。
「30分で終わるから」という嘘をつかれて2時間みっちりの撮影。
ツアー案内を出した後は、ツアーの下見へ。ちなみに下見の回数は結局6回ほど。
そして参加者だけが閲覧できるFacebookページへの投稿、自身のFacebook、Twitter、Instagramへの投稿と、休む暇なく情報をアウトプットしていく。
そんな彼に触発されて、僕もFacebook、Twitterで料理の仕込み風景や施設の情報を毎日のようにUP。
そんなことをしていたら、このツアーへの思い入れが強くなっていき、当日の献立も大きく変更することに。
「とことん富士山にこだわってやろう」と思った。いや、思わされた。
(富士山の湧き水を汲んできたりと色々と試行錯誤したが、その辺りの食事については次回のブログにて)
とことん人を楽しませる姿勢は、確実に人を変えていく。驚きでした。
ストーリー作りの重要性
このツアーで学んだことは、ストーリー作りの重要性だ。
例えば、「富士山を撮影して回るツアーをやります!ご参加ください!」だけでは、何も伝わらない。
昨年の情報、下見の情報、当日の献立の情報、お昼ご飯の情報・・などなど、参加してもらう人に事前に情報を出すことで、高揚感が生まれる。
こちらがストーリー作りしてあげることによって、ツアーへの期待が高まる。
これはJTBやHISなどの大手旅行代理店には絶対できないこと。
つまり、再現性のないツアーなのだ。
丁寧に丁寧にストーリーを作り上げることによって、楽しんでもらうことができる。
ストーリー作りは、これからの観光のあり方になっていくのではないかと思う。
Twitterでハッシュタグ#スギフジツアー で検索すると分かる。参加者の笑顔で溢れているから。
目の前の人を楽しませる事は、実はすごく難しい事。
発信をして、ストーリーを作り、とことん楽しませる、そして企画した方も楽しむ。
これがこれからの旅行、観光の指針になるのではないか?
いや、街づくりにも同様のことが言える。
目の前の人を喜ばせるには?参加してくれる人を喜ばせるには?
これを突き詰めていくと、人が集まって来るはずだ。
1人が100人喜ばせるより、1人を喜ばせる人が100人いた方が街づくりは絶対上手くいく。そう思っている。
行政ではなく個人が。少ない人数で良いから、目の前の人を楽しませてみてはどうか。
楽しそうにしている人に、人はよって来るのではないか?
楽しんでいる個人を街の魅力にするのはどうなのか?
*スギフジツアーの内容記事は次回から