移転先の「富嶽はなぶさ」はプレオープン中。
調理場も、ガンガン動かし始めています。
まだまだ慣れないのでやりづらい部分はありますが、そこはプロですのでね。
時間が解決するでしょう。
はなぶさ旅館の場所にある建物は、この後、素泊まりの宿”はなぶさINN”として再出発します。まだオープン日は未定ですが。
おまんじゅう屋ひと花と、とろろ家はなぶさは、現在もそのまま営業中。
ですので、はなぶさ旅館の調理場も、実はとろろ家の仕込みや営業をするのに動かしているのです。
僕らは、朝に”はなぶさINN”の調理場へ行って、とろろ家の仕込みをし、終わったら”富嶽はなぶさ”の調理場で夜の仕込み。
なかなかハードな内容ですが、これも慣れるのかなと。プロですから。
それから、今募集中の調理師が雇えれば、もっと良いオペレーションを構築できるのかと。
スチームコンベクションって何?
移転先の「富嶽はなぶさ」の調理場は、「はなぶさ旅館」の調理場に比べて新しい調理器具が沢山あります。
フライヤーやミートカッターなどなど。
その中でも一番興味のあったもの、それはスチームコンベクション。
スチームコンベクションって知ってます?
ビックリするほどなんでも出来る機械で、分かりやすく言うと「ヘルシオのバカでかいやつ」です。Panasonicのビストロも同じ。
テキトーに作ったピーマンの肉詰めが美味しかったからちょっと嬉しい。
豚小間切れフープロでミンチに
玉ねぎ塩胡椒カレー粉塩昆布混ぜて
ピーマンに片栗粉薄く振り
肉だね乗せてビストロへ
「ピーマンの肉詰めコース」
2人分でスタートカレー味美味しかったしビストロ最強。#シノズキッチン pic.twitter.com/3G3XPWYvOC
— 田中忍シノズキッチン料理教室やスパイス販売してるまちのでんきやヨメ (@yoden1490) 2019年6月15日
一時期、一般家庭でブームになりましたよね。あれの業務用。
飲食業界でも話題になったやつで、「スチコン半端ないよ」というセリフは、飲食の方々から多く聞いていた。
実際に、業務用の調理器具の祭典などに行った際には僕も必ずチェックしていました。
しかしながら、ちょっと見たのと実際に調理場で使ってみるのでは全然違う。
「スチコン半端ない」
と。
スチームコンベクションが出来る事は
- 蒸す
- 焼く
- 煮る
- 揚げる
- 茹でる
- 発酵させる
- 真空低温調理
などなど、そのは内容は多岐に渡る。
ヘルシオとかビストロとかの便利家電を使った事ある方なら、その便利さはお分かりになるかと。
今までのはなぶさ旅館では、オーブンを使い、蒸し器を使い、鍋で揚げ物をし、煮物をしていた。
- たまご豆腐を作る時は、蒸し器の火を調整して”すが入らない様に”と
- オーブンは200℃で焼くか180℃で焼くか分けたり
- 揚げ物の温度を素材によって調整したり
と、火を入れる仕事は職人の腕が試される部分がかなり多かった。
それが僕ら料理人のアイデンティティだった・・はずだった。スチームコンベクションを使うまでは。
かつての僕らの栄光は光を失い、スチコンが料理の主役へ・・・。
「職人要らなくね?」
”痒い所に手が届く”
前述したように、スチームコンベクションは火入れのプロだ。
蒸す・焼く のみならず、揚げ物から野菜の下処理、パン生地の発酵まで、本当に何でもできてしまう。
痒いところに手が届く、というか「そこ痒くなかったんですけど・・」ってとこまで掻いてくれる。
例えるなら、「付き合う男をダメにしてしまう彼女のような存在」
何から何までな~んでもやってくれるのだ。
今までは、
- 67℃のお湯を用意し
- 素材を入れ
- 67℃にキープする様に温度計を入れて
- ガスの火を強くしたり弱くしたり
そんな風に仕込みしていたが、もうそんな必要がないのだ。
- デジタルを67℃にセットして
- 素材をぶっ込む
- 時間を決めて、はい終了
・・・嘘だろ。
温泉たまご作る時のあのシビアな感じ、無いのかよ。
という事案が他にも沢山。
- たまご豆腐
- ローストビーフ
- トマトの湯むき
- 炊き込みご飯の炊飯
- パウンドケーキ
などなど。
今まで「職人技」とされていたものが、スチコンによりどんどん自動化されていた。
移転して最初に、スチームコンベクションの会社の人に使い方を説明してもらった。
その時の最後の言葉が忘れられない。
「設定温度と時間を決めて、後はパートさんに任せれば大丈夫です」
と。
やっぱ「職人要らなくね?」
スチームコンベクションに殺される日
自動運転の技術が発達し、「タクシー運転手」や「トラック運転手」という仕事が無くなると言われている。
他にも、銀行の窓口や電話のオペレーター、レジ係など、AIの発達により後10年で多くの仕事が無くなるとも。
→オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」
僕ら料理人の仕事も、確実に自動化の道を辿っている。
恐らく、スチームコンベクションよりも有能なAIを搭載した調理器具が出てくる事は明白で、もちろん業務用に転換される事だろう。
以前、40代の料理関係の方がこんな事を言っていた。
「まだ料理の世界にAIの時代はこない」
と。
残念ながら確実に来る、と言うか来ている。
では僕らはどうしたら良いのか?
- 転職するのか
- AIがまだ出来ない料理の仕事をするのか
- AIの開発を手伝うのか
どれも正解だとも思う。
時代の変化に合わせて、料理人も変化していかなければならないのだ。
想いを込める・伝える
僕は、”料理に想いを込める”事が大切だと思う。
そしてその想いを伝える事、伝え続ける事が。
人間にあって、AIに無いもの。それは”心の込もった想い”ではないだろうか。
AIには”想い”は込められない。心から美味しいとは感じないし、綺麗だとも感じない。
美味しい分量と、綺麗に魅せる盛り付けマニュアルが搭載されているだけで。
僕ら人間は、心から美味しいと感じられるし、心から綺麗だと思える。
そんな心を持っている事が、人間の優っている部分ではないだろうか。
だから「クローズキッチンで料理を作っているだけ」では、AIの料理と変わらなくなってしまう。
僕らは、僕らの想いを伝える努力をしないと。
料理に込めた想いを。
それは、ブログだったり映像だったり、はたまたSNSだったり写真だったり。
”美味しいものを作っていれば伝わる”なんて時代は終わったのだ。破綻したのだ。
これからは、”美味しいものを作る”以上に、”料理の込めた想いを伝える事”が大事なのかなと。
クリエイティブになる事。
ルーティン作業をこなすのであれば、AIで良い。むしろAIが得意な分野だ。
僕らは、常に新しいことに挑戦して、お客様を楽しませて感動させる努力をし続けないとならない。
もちろん料理をアップデートし続けるのもそうだし、提供方法を考えるのもそう。
ワイン会や椀子そば大会など、料理に関するイベントだってそうだ。
”人を楽しませる事”は、人間が一番得意とする部分なのではないだろうか。
昔も今も「サービス業」はずっと存在してきた。
そしてこれからも無くならないだろう。
AIが作った料理が提供され、ロボットに接客される日は近いかもしれない。
それでも、人の”おもてなし”が消える日は来ない。
そう信じて、今日もスチームコンベクションの電源を入れる。
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