ナマコのトラウマ
ナマコが美味しい時期になりました。
と言っても、はなぶさ旅館では2月の献立に入れていたので3月の献立にナマコは入りません。
では何故こんなブログを書くのか?
それは、Twitterでこんなやり取りをしてしまったから。
次回はナマコブログ書きます!
冗談抜きにでウチのナマコは日本一です!下処理にかける思いが違います!
でももう終わりなんですが。。笑— 「はな」陶芸の宿はなぶさ三代目 花房光宏 (@hanabusamitsu) 2018年3月5日
言ってしまいましたからね。
あとですね、少しだけ残っているんです。多分今週末ぐらいまであるかな、ナマコ。
お客様からも直接、「美味しいですね」「柔らかいですね」とか「どうやって作ってるんですか?」などのご質問をかなりの数いただいた、はなぶさ旅館のナマコ。
(ちなみに、食材や作り方のご質問があれば、コメント欄でお聞きください。知ってる範囲で可能な限りお答えいたします。*はなぶさ旅館への、お電話でのご質問はご遠慮ください。)
そんなナマコの旨さの秘訣は「下処理」
ブログでも何度も書いていますが、料理で一番大事なのは下処理。ここを怠ると美味しい料理は出来ません。確実に。
コンニャクの隠し包丁なう。
何度も書いていますが、料理は下ごしらえが一番大事。ここを怠ると完成図が全然変わってしまう。
「まぁいいや」ぐらいの下ごしらえは「まぁいいや」ぐらいの味にしかならない。ぜったい。
コンニャクが上手く炊きたい方はこちらをどうぞ→ https://t.co/6ydL707tSg pic.twitter.com/n8TUl04y0L— 「はな」陶芸の宿はなぶさ三代目 花房光宏 (@hanabusamitsu) 2018年3月4日
そんなこともツラツラ書いている記事はこちら↓
ナマコの下処理は、お店によっても違いがあります。
以前働いていた、東京のお店でのナマコの下処理で僕にはトラウマが。
品川にあるそのお店の料理長は、和食の世界でも有名な方でした。当時の僕の親方ですね。(親ではないですよ)
15歳から和食の世界に入った親方は、職人中の職人。本当に心からスゴイ!と思えるような人でした。
料理の世界に長くいると、考え方が凝り固まってきてしまって、中々新しいものを受け入れられないオジさんが沢山いますが、親方は全く違っていました。
当時20代半ばの僕が見ても「新しい」と思えるような献立をバンバン出してくるし、僕が作った賄いからもヒントを得て献立を組んできます。
ビックリしますよ。献立に「鶏肉の西京焼き」と書いてあり「これはどうやって作りますか?」と聞くと、「あー、あれだ。この間の賄いのヤツだ」とか言われますから。
正直、メチャメチャ嬉しいです。自分が考えた献立が認められたようで。
そういう気持ちも、もしかしたら汲んでいたのかもしれませんが。
で、ですね、その親方のナマコの仕込みが少し独特だったのです。
普通はナマコに半分切れ込みを入れて、中の筋肉をこそいでいくのですが、親方の仕込みはナマコの天地を切って中のワタを取り出し、空洞にペティナイフをぶっ刺してグリグリ筋肉をこそいでいくというもの。そうする事によってナマコはドーナツ型のままになります。
この仕込みの肝は「えっ?どうやってるの?どうしてその形のままなの?と思ってもらう事」だそう。
まだひよっこの僕は、言われるがままに下処理をしていたのですが、ある日先輩から「半分に切れ込み入れちゃえば?」と言われて(え?切れ込み入れて良いんかい!もっと早く言ってくれよ)と思って素直に半分に切れ込みを入れて下処理をしました。
えー、それを見た親方がですね・・・はい、ブチ切れました。
もうブチ切れです。
「あ、人ってこんなに怒れるんだ・・」ってくらいのブチ切れでした。それも1週間丸々ブチ切れっす。
怖いですよー、何たって1週間ですからね。「おはようございます」と言ったそばから全力でキレられるんですから。あー怖い。思い出しただけで怖い。
でもですね、僕が悪いんです。
下処理一つ取っても「こだわり」があるんです。
今だからその重要性が分かります。ホント大事です、下処理は。
ドーナツ型になっていなければ、親方のナマコは成立しないのです。
だからですね、今でもナマコを仕込む時は、この時の事を鮮明に思い出すのです。そして、この仕込みの仕方は死ぬまで忘れないのです。キレられた記憶とともに覚えているのです。
これが僕のトラウマ。今となっては良い思い出ですがね。
ナマコの下処理
ナマコの下処理は面倒臭いです。・・正直に言えば。
ナマコの内側の筋肉を取るのが大変だし、切れる包丁で薄くスライスしていかないと硬さが残ってしまうので。
よくその辺の居酒屋さんの突き出しで出てくるナマコは分厚くて硬くないですか?
「歯折れるわ!」ってくらい硬いナマコを食べた時ほど悲しいことはありません。
あれはですね、筋肉の取り方が甘いか、包丁が厚いかのどちらか、もしくはどちらもです。
ナマコほど下処理が顕著に出る食材はありません。だって食べられないほど硬くなっちゃいますから。
硬いナマコが出てきたら「あ・・下処理甘いな。」と思っていただいて結構です。
何が言いたいかと言うと
はなぶさ旅館のナマコは劇的に柔らかい!と言うこと。これがお伝えしたくて。
当館では、ナマコの下処理には時間をかけております。
- 筋肉をこそぐのも残しがないように
- 包丁も切れる包丁で薄く(薄すぎてもナマコの良さが死んでしまうので微妙な加減で)
- ほうじ茶でナマコを沸かして柔らかく(ほうじ茶の成分で柔らかくなるのです)
- そして一度冷凍(繊維が壊れて更に柔らかくなります)
- ナマコ酢は鰹をたっぷり効かせて(多分普通のお店の倍ぐらい鰹を効かせます)
ここまでしてようやく、口の中に入れた時の感動が生まれるのです。
居酒屋ではココまでやらないと思います。ウチはやります。
だから違うのです。
どうですか?はなぶさのナマコ、食べて見たくなりましたか?
しかし残念ながら今週末までです。食べれなかった方は、来年をお楽しみに!
コメント
硬いナマコが好きな私(⌒-⌒; )
なめこさん
コメントありがとうございます!
そうなんですよね!意外と硬いナマコが好きだという意見を、このブログを書いた後に言われました!
確かに当館のナマコは柔らかいですが、程よい歯ごたえも残しております。
僕もそれまでは硬いナマコが好きだったのですが、価値観が変わりました。
なめこさんにも是非一度味わっていただきたいです!