富嶽はなぶさに来たら食べてもらいたい一品。山葵ご飯”伊豆まぶし”

富嶽はなぶさの名物、山葵ご飯をアレンジした”伊豆まぶし”

僕が考案して、2年ほど前から献立に入れた料理です。

(伊豆まぶしの説明や、食べ方は後述します)

最近、伊豆まぶしを「伊豆長岡の名物」へとするべく、動き始めました。

来年に行われる「静岡DC(ディスティネーションキャンペーン)」期間中、伊豆長岡の様々な旅館で、”伊豆まぶし”が食べられるようになります。

僕が考えたレシピが、各旅館に広がっていくことが素直に嬉しい。

伊豆に来たら天城の山葵を食すべし

食材豊富な伊豆半島。伊豆に来たら、あなたはまず何が食べたいですか?

  • 駿河湾の鯵や金目鯛
  • 天城で採れる山菜
  • 狩野川の天然鮎
  • 鹿やイノシシなどのジビエ
  • 天城軍鶏
  • 三島馬鈴薯
  • 韮山の野菜、果物
  • 原木しいたけ

などなど、挙げていったらキリがないほど食材が豊富で、職人からすると、有り難すぎる良い土地です。

食材豊かな伊豆の中で、僕が特に食べてもらいたい食材は、天城産の本山葵です。

静岡県は長野県に次いで、山葵の生産量が多い。そして、伊豆天城は山葵の名産地です。

皆さん、本山葵って食べたことありますか?

普段、回転寿司などで食べている山葵とは、まるで別物。風味が高く、まろやかな辛さです。そして、辛さの中に甘みを感じることができます。

当館でも2年ほど前から、本山葵を使い始めました。

一度食べたら忘れられない!そんな逸品です。

本山葵の旨味を最大限味わう ”伊豆まぶし”

個人的に、どうしても会席の献立に、天城産本山葵を使いたい!と、思っていたので、八百屋から勝手に本山葵の見積もりを取り、道具屋から卸し金の見積もりも取り、献立に本山葵を入れるようにしました。

待っていても、誰も動きませんからね。やりたいなら、自分で動くしかないです。

本山葵を使い始めた最初の頃は、お刺身と一緒に本山葵をお出しして、お客様に擦る体験をしてもらいました。

もちろん、反応は良かったのですが、何だかしっくりきません。

「・・普通だな」

そんな気持ちでいっぱいでした。

何か他に本山葵を活かす料理はないか?面白い山葵の食べさせ方はないか?

毎日、アイデアを探す日々は続きました。

そんな折、テレビで伊豆市の山葵丼を紹介する番組を、たまたま見ていて、「山葵丼って、本当に美味いのか?」という疑問が。

早速、旅館で山葵丼を試食してみると、うん、確かに美味い。

山葵丼が素晴らしい点は、山葵が主役になっている所。

コレだ!と思いましたが、そのまま出すのでは、ただのパクリになってしまいます。

では、どうしようか?

  1. お出汁かけたら美味いだろ?・・うん、美味い。
  2. じゃあ、山葵丼お出汁 の流れか?・・良いけど、面白みに欠けるな。
  3. では、【ひつまぶし】みたいに3回に分けて食べられるようにしては?・・良いな。
  4. 【ひつまぶし】に倣って、【伊豆まぶし】というネーミングにしようか。・・完璧やん。

って、ココまで全部僕の頭の中の話です。

試行錯誤して、結局 山葵丼ご飯のお供出汁茶漬け の流れに決定。

そこでようやく調理長に相談。出汁の味、ご飯のお供など、細かい部分を詰めることに。

完成したのがコチラ。

お出汁は、一番出汁より少し濃いめ、土瓶蒸しぐらいの味付け。

ご飯のお供は、大根のはりはり漬け・有馬煮昆布・錦松梅の3種類を用意しました。もちろん自家製です。こだわりは、廃棄する食材を使う事。出汁殻の昆布や鰹節、大根の皮などを使いました。

和食の良い部分は、食材を大事にする事です。そこに注目して、普段廃棄するような食材を多く使いました。

以前、そんなブログも書いてます。

料理人として一番大切にしなくてはいけないもの、それは「食材」である。 どこまで食材を無駄なく使えるか? 和食の素敵なところは「食材を大切に使うココロ」

もひとつ、いつも棄ててしまいがちな、大根の皮を「ハリハリ大根」にしてしまうレシピはコチラ。

前回のブログで書いた「棄てたらゴミ、使えば食材」のレシピブログ。 いつもは棄ててしまいがちな大根の皮も立派な漬物になるのです。 ご家庭で簡単にできるので是非!

伊豆まぶしの食べ方は

  • 1杯目は、すりおろした本山葵をご飯にのせ、鰹節とお醤油で、山葵丼そのものをあじわいます
  • 2杯目は、3種類の「ご飯のお供」を添えていただきます
  • 3杯目は、ご飯に山葵を乗せたら、当館自慢のお出汁をかけて出汁茶漬けに

ようやく出来上がった”伊豆まぶし”は、お客様に大好評。

  • 「山葵の美味しさを味わえる」
  • 「お酒を飲んだ後にも食べやすい」

などといった声もいただきました。

伊豆まぶしを、伊豆長岡の名物へ

一年ほど、伊豆まぶしを提供してきて、ある感情が沸いてきました。

「他の旅館や飲食店でも、伊豆まぶしを出したら、伊豆長岡の名物にならないかな?」

という想い。

別に、僕が考えて作った料理だから、レシピ公開する事に何の躊躇もありませんでした。というか、半分、伊豆市の山葵丼をパクって完成した料理ですから。

お客様からは大好評の伊豆まぶしでしたが、はなぶさ旅館だけでやっている事に、虚しさを感じるようになっていたのです。

旅館組合青年部に、そんな思いを伝えた所、「じゃあ伊豆まぶしの試食会をやってみよう」と、実際に調理長に集まっていただき、試食会を行いました。

写真は、旅館組合青年部メンバー5軒の旅館の料理長をお呼びした試食会。

反応は上々で、実際に、伊豆まぶしをお客様へ提供してくれた施設もありました。が、オペレーションや仕入れで問題があるようで、あまり広がりは見せませんでした。

結局そのまま、当館だけで伊豆まぶしの提供を続けていましたが、来年行われる静岡DC(ディスティネーションキャンペーン)で、伊豆まぶしを押し出してみてはどうか?という話が上がりました。

DC(ディスティネーションキャンペーン)とは、

北海道旅客鉄道(JR北海道)・東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・四国旅客鉄道(JR四国)・九州旅客鉄道(JR九州)のJRグループ旅客6社と指定された自治体、地元の観光事業者等が共同で実施する大型観光キャンペーンのこと。
デスティネーション=Destination(目的地・行き先)とキャンペーン=Campaign(宣伝戦)の合成語。「DC」「デスキャン」と略される例が見られる。

Wikipediaより引用

簡単に言いますと、「JRとタッグ組んでお客さん呼ぼうぜ!ガンガン企画して、ガンガンPRして観光客増やそうぜ!」的なヤツです。来年の舞台は静岡。

詳しくは、静岡DCのHPをご覧ください→静岡ディスティネーションキャンペーン

と言うわけで、先月の4月に、当館・はなぶさ旅館にて、”伊豆まぶし”の試食会が行われました。

旅館組合に加盟する旅館の、社長・女将・料理長・調理人などなど、様々な旅館の方々に、はなぶさ旅館自慢の、”伊豆まぶし”を召し上がっていただきました。

伊豆まぶしの美味しさには、もちろん自信があります。

結果は・・GO。当然のGOです。

各旅館の経営者、調理長にも、伊豆まぶしの美味しさが伝わったようで、ホッとしました。皆さんから、積極的な質問もいただけました。

来年の、静岡DCの期間中は、伊豆長岡温泉の様々な旅館で、各調理場ならではの”伊豆まぶし”が提供される事に。

非常に嬉しいです。

どんなに良い商品も、1店舗だけでやっていては広がりに限界があります。

「B級グルメ」でも、「ご当地グルメ」でも何でも良いので、伊豆まぶしが、伊豆長岡の新たな名物になればと思っています。

「伊豆長岡に来たら、”伊豆まぶし”を食べなきゃね!」

そんな風になる日に向けて、頑張るしかないね。

レシピ公開で広がる未来

これは僕の考えなのですが、今の時代、「秘伝のレシピ」や「門外不出の〇〇」なんて、オワコンなんじゃないか?って思っているんです。

だって、Googleの窓に「〇〇 レシピ」って入れたら、数え切れないくらいの「答え」がはじき出されます。ウェブ上には、素人から現役の板前まで、多くの人が、レシピをブログやSNSで公開しています。

現に、こうして現役の板前が、ブログでレシピやこだわりなどをバンバン投稿していますしね。

でも、公開したところで、そう簡単にプロの技は再現できない。もし再現できたとしても、あなたのファンは奪われないはず。だって、そのファンは最早、「あなたの味」のファンではなく、「あなた」のファンになっているはずだから。

隠しておくよりも、見せてしまった方がファンは増える。僕はそう思っています。

秘伝のレシピで、小さな成功を収めてチンケな自尊心を温めるより、レシピを公開して、多くの人を巻き込み、結果大きな成功を収めた方が、喜びは大きい。

伊豆長岡温泉の旅館に、僕の”伊豆まぶし”レシピを公開したので、先ずは「伊豆長岡温泉」のファンを増やす事から始めよう。

大きな成功を収めるために。続けるよ。Keep going。