煮しめの暴力
先日のこと、台湾から働きに来ていた女中さん「温ちゃん」が当館を辞め帰国することになったのです。とても心優しい彼女は、従業員みんなから愛される存在。
そして「送別会をやろう!」となり11月にその会が開催されました。こういう会は滅多にやらなかったので、僕個人としても嬉しかったです。
当日、送別会に少し遅れて参加すると、料理長が「これ食べてみ」と言って「煮しめ」を勧めてきました。
「ん?煮しめ?」なんて思って口に運ぶと「旨まっ!」と。料理長が「ね!旨いよね!これ、みつ子さんが炊いてきたらしいんだよ」と一言。
こちらがみつ子さん(年齢非公開)
ウチで働く女中さんです。もうベテランで、お客様への接客の距離感は感心するばかり。スルスルスルッとお客様の距離に入っていきます。毎年来る僕の先輩はみつ子さん(年齢非公開)指名で来ます。*ちなみに普段は女中さん指名制度はありませんので悪しからず
そんなみつ子さん(年齢非公ka・・しつこいね)、帰国する温ちゃんを孫のように可愛がっていました。帰国してしまうのが残念で仕方ないようで、この送別会のために煮しめを炊いてきたのだとか。
そしてその煮しめが旨過ぎるのです。正直「僕には出せない味」と素直に認めます。「腕が良い」などという浅はかな表現ではなく「若い奴には出せない味」という表現がピッタリ。「女中じゃなくて調理場で明日から働けば?」と言ってしまったくらい。
負けました、はい。煮しめを食べて「これは煮しめの暴力だ!」と思ったのは初めて。料理長もその味に驚いていました。
でも少し酔っぱらったみつ子さん(永遠の75歳)が放った一言が「実は煮しめよりモツ煮の方が得意なの」・・・はぁ?
マジかよ!これ一張羅じゃないのかよ!って心の中で思って、心の中に仕舞えずそのまま口に出して。
「じゃあ今度みんなに作ってくる」とその日約束。3日ぐらいしたら本当に作ってきてくれました。
食べた感想はもちろん「旨まっ!」です。ちなみに一緒に炊いてきた昆布煮も激ウマでした。ちくしょう。
ふと思ったのは、これだけ長く働いてくれている従業員さんの作る煮物が美味しいことを今まで知らなかったという後悔と、この美味しい煮物を隠しておくのはどうなんだ?という想いです。
そんな事を思っていたら、「よし!じゃあ販売してみよう!」と口に出していました。
どうせならお客様にも味わってもらおう!と。
何故女中さんが作ったモツ煮を提供してはいけないのか?・・いけなくない!むしろいける!当館は高級旅館でも何でもないのだ。モツ煮を売ろうが何しようが誰からも咎められないだろう。むしろ喜ばれるはず!
・・と何とも安易ですが。笑 でもダメなら止めればいいし。
「とにかくやってみよう!ダメならやめれば良いんだから」というのは今年の僕の口癖。まずは始めてしまおうと。やってみてから考えれば良いのだ。いくら頭の中で描いていても、やってみないと見えない事など山ほどあると。
だからこのモツ煮販売もGoです。とにかく売ってみてから考える!
となればすぐに発信です。
#はなぶさ旅館 の女中さん「みつこさん」の #モツ煮 が劇的にウマイ!
なんというか腕がいいとかそういう次元では無くて、上手く表現できないけど「若い奴には出せない味」だね。
昆布の炊いたやつも絶妙。
1月から旅館で売ります!こんなん隠してたら罰当たります!お楽しみに!
みつこ頑張れ! pic.twitter.com/OY1CFAwZXz— 「はな」陶芸の宿はなぶさ三代目 花房光宏 (@hanabusamitsu) 2017年12月1日
社長に何の相談もなしに投稿です。
「やってみよう。怒られたら謝ればいいんだから」
プレ販売
12月は年間でも一番忙しい時期なので、落ち着いた1月からスタートする事に。
でも投稿を見て
常連様のエクスマ合宿メンバーからこんなコメントも。
今回は僕が作るのではなくてみつ子さんが作るので、みつ子さんに相談。
すると「やる」と言ってくれたので、常連のエクスマ合宿にて販売してみることに。
モツ煮を来月から販売するという事をご説明。
すると
はなぶさ旅館、新メニュー
『みっちゃんのモツ煮』
柔らかくて、美味しい。
しつこくない、味噌味。#はなぶさ旅館 #みっちゃんのモツ煮 pic.twitter.com/8PUYITtF5p— 藤村正宏 (@exmascott) 2017年12月7日
キターーー! はなぶさ新作 #みっちゃんのモツ煮 ❣️めっちゃやわらかーい!1日半煮込んでとろっとろ〜^ ^お味噌であったまるー(*^^*)みっちゃんありがとーーお袋の味だね(*^^*)#はなぶさ#みっちゃんのモツ煮 pic.twitter.com/WtJNjBz393
— 篠木麻希@女性リーダーのお悩み解決 (@shiawasefusen) 2017年12月7日
大好評でした!やはり美味いですから!
しかもエクスマの皆様は影響力あるので、これを見て食べたくなった人も多そう。というか地元の酒屋さん杉山商店のスギちゃんもこれを見て食べたくなったようでおすそ分け。
伊豆長岡温泉の「はなぶさ旅館」の新メニュー #みっちゃんのモツ煮 を地元のコネを利用して若旦那からゲット! 笑
食べたら噂は本物!マジで旨い♪ #ベアードビール との相性もバッチリ!早く商品化して欲しい。
友人みなちからの頂き物 #ヤマサちくわ もサイコー!感謝です♪ pic.twitter.com/Ip3WTkgSO3— 杉山雅一「伊豆の酒屋 杉山商店」 (@sugichanz) 2017年12月9日
良かった良かった。
しかも余っているなら送ってくれ!との事で2件発送もする事に。
はな @hanabusamitsu ちゃん、きたーー!みっちゃんのモツ煮きたーー!
ありがとーー(*^^*)#みっちゃんのモツ煮 pic.twitter.com/qKP6iQlQPJ— 篠木麻希@女性リーダーのお悩み解決 (@shiawasefusen) 2017年12月12日
いや、すげーな!みつ子すげーな!さすがです!
1月からの販売が楽しみです。
楽しさを知る
旅館にご来館されるお客様の1日は特別な1日。
でも旅館で働いている従業員はいつもの1日。
ここに違和感があります。
来る人と迎える人の気持ちに開きがあります。
なんとかならないかな?などと以前から思っていたのですが、人の気持ちなど簡単に変えることなどできません。
では、働く人が「楽しい!」と思える職場を作ったら?
今回のモツ煮販売はそんな変化の始まりになればと思っております。
「板場が作ったモツ煮」ではなく「自分が作ったモツ煮」なら食べてもらった時の想いも、売る時の気持ちも全然違うかなと。
僕自身、前の料理長が辞めてから献立や料理の出し方を、それまでのやり方からガラッと変えました。自分が考えた献立や出し方、食材を並べました。どうなるか不安だったし、原価率などの事も不安でしたが、蓋を開けてみれば大好評。
この時も「とにかくやってみよう。やってダメなら変化させて、それでもダメなら以前に戻そう」と。
変更したての時は、楽天やじゃらんのレビューを毎日見ていたし、女中さんに「どう?残してる?」と毎日のように聞いていました。それから色々変更は加えましたが、変えて本当に良かったと思っていますし以前のやり方に戻そうという気はさらさらありません。
この変更を始めてから軌道に乗せるまでは本当に楽しかった。そして毎日ワクワクしていました。
これを従業員のみんなにもやってもらえたら、「いつもの仕事」から「特別な仕事」への変化を与えられるのでは?などと勝手に思っています。なので従業員さんの「好き」をどんどん発信して行こうかと。
まずは第1弾!モツ煮販売です!
ちなみにみつ子さんは肉も魚も食べないそうです!作るのが好きなんだとか!まじかよ!それであんな美味いのかよ!味見どうしてんねん!
みっちゃんの好きなモツ煮、皆さんに届けまーす!