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和食を目指す若者は0人
「フレンチとイタリアンが9割、残りの1割の学生が中華料理」
10年くらい前に、調理師専門学校の校長先生が発した言葉だ。
耳を疑ったか?と問われれば、「まぁ、体感的にはそんな気はする」と答えただろう。ここ数十年で、和食の料理人を目指す若者は激減した。
- 厳しい
- キツイ
- 汚い
の”3K”と言われる飲食業界でも、特に嫌われているのが「日本料理」ではないだろうか。
あれから10年が経ったが、現状は変わったのだろうか?いや、改善しているとは到底思えない。
現に、若い和食の調理人をリクルートしようと思ったとして、高いお金を掛けて求人を出しても問い合わせすらない。そんな感じだ。
では、実際に和食の現場はどうなんだろう?
10年以上和食の世界で働いた僕の主観では、確かに若い頃は厳しかった。
めちゃめちゃ怒られ、悩み、成長して、の繰り返し。
若い頃は、一番伸び代があるので一番成長できる時期。やる仕事全てが”知らない仕事”。スポンジのように吸収して仕事を覚えました。
そんな風に必死こいて仕事した経験が、今の僕の礎になっているのは言うまでもない。
これは料理の世界に限った話では無いだろう。
- 美容師だって
- 医者だって
- 営業だって
- 栄養士だって
- フリーランスだって
みんな下積みはあると思う。
下積みや経験が無い人間にスキルはないだろうし、スキルが無い人間に仕事を振るほど世の中は甘くない。
「今は個人の時代だ!」と言って、YouTubeやSNSで発信しようとしても、技術も知識も無ければ発信しようが無い。
ある程度の下積みは、誰にだって必要な時間だと思う。
そういう意味では、料理の世界では「どの料理を選ぶのか」がその後の人生に大きく影響を与える。
- フレンチなのか
- イタリアンなのか
- 中華なのか
- 和食なのか
- はたまた寿司職人なのか
- 天ぷらなのか
- それとも海外なのか
僕も昔、結構悩んだ時期がある。
イタリアに行ってイタリアンを学ぼうかな?とか思った時期も。はたまた、栄養士として働いてから、健康に気を使った和食を出そうかな?とかいう現実的な考えをしたり。
若い時は、若い時なりに、若い頭を使って色々考えるんですよね。
フレンチ職人との出会い
最近、フレンチ畑でずっと修行してきた同世代の料理人が、富嶽はなぶさに入社してくれた。
7月に入社してから、富嶽はなぶさの立ち上げを一緒に頑張ってくれた彼。しっかりとフレンチの下積みした職人で、「和食を勉強したい」とジョインしてくれた。
「ここ(富嶽はなぶさ)を辞める理由は一つもないのですが、やりたい事が出来てしまいました」と、先日で卒業してしまったのだが、本当に料理を愛していた料理人だった。
(富嶽はなぶさ公式ブログはこちら→「仲間の次なる道を応援する」)
彼から学ぶことは非常に多くあり、彼もまた、僕らから学ぶ部分は多分にあったと思う。
フレンチの技術・知識を和食の料理人が学び、和食の技術・知識をフレンチの職人が学ぶ。
初めて和食以外の料理人と働いて、料理へのアプローチが結構違うことに気づいた。
ざっくりとだが、
- 「和食は素材の味を」
- 「フレンチはマリアージュを」
以下で、ちょっと解説してみよう。
「味覚編」和食のアプローチ
和食の味や食材に対するアプローチは
- 素材を活かす
- 出汁を大事にする
- 味をそぎ落とす
- 四季を大切にする
- 手を加えない美学
という感じですかね。個人的には。
「食材や味付けをそぎ落として、素材そのものの良さを活かす」というのが、和食の素晴らしい部分。
”こんなシンプルなのに何故こんなにも美味しいのや・・・”と感じた事はないだろうか?
ただのお椀が、「プロの味」として提供される事が和食の美学である。
和食の味付けは、丁寧に取ったお出汁や、ギリギリの味付け、素材を活かす下処理など、細かい部分に集約されているのだ。
たった一つの料理に、これほど手間暇かけるのか・・と驚くほどに。
そして、器・盛り付け・食材・味付け・あしらいなどに四季を合わせる。
それが和食。
「味覚編」フレンチのアプローチ
フレンチの味や食材に対するアプローチは、
- 味を重ねる
- 食感や風味などを合わせ、口の中で完成させる
- ストーリーを大切にする
- 手を加える美学
という感じですかね。フレンチで修行していないので、僕の主観になってしまいますが、とにかく”マリアージュ”を大切にするのがフレンチ。
味・食感・風味・ワインなど、口に入れて合わさった時に完成させる(マリアージュ)のがフランス料理の真髄なんだと。
味付けは、とにかく「足し算」。一つの素材に、ソースを何種類と用意し、付け合わせなどで味を足していく。
そして、料理のストーリーを大切にする。どこ産の肉なので、同じ地域の野菜とお酒を合わせる・・と言った感じに。
それがフレンチ。
プロフェッショナルな部分「和食」
では一体、それぞれの料理のどの部分が秀でているのかを考えてみよう。
フレンチの職人と働いてみて、和食が圧倒的に秀でている部分が分かった。
包丁技術だ。
「こんなに包丁使ったの初めてですよ」と、働き始めて最初の頃にフレンチシェフが言った言葉を覚えている。
とにかく和食は包丁を使う。包丁で魅せるのが、日本料理なのだ。
包丁の種類が多いのもそういう理由から。
- 例えば「刺身」なら「柳包丁」で「引切り」
- 刺身のつまなら、「薄刃包丁」で「桂剥き」
など、用途によって切り方も包丁も変えるのは、世界広しといえども、和食以外にはあり得ないだろう。
包丁技術を極めたいなら、和食を勉強するべきなのだ。
プロフェッショナルな部分「フレンチ」
対するフレンチが圧倒的に秀でている部分は、「火入れ」だろう。
肉や魚の火入れは、もうとんでもなく上手いのがフレンチの職人。
鹿肉を、中は綺麗なピンク色に仕上げるのを見た時は感動した。
フライパンで肉の表面を焼き固め、オーブンに短い時間入れ、取り出して休ませ、またオーブンに入れてを繰り返す。
「ミキュイ(中央を半生にする)」という状態にする技術は、和食の職人には無い技術だった。
火入れを極めたいなら、フレンチを勉強するべきだ。
和食・フレンチに共通する部分
和食とフレンチ、確かに料理へのアプローチや得意・不得意な部分はあるが、共通しているのは「綺麗で美味しい料理を作る」という部分かなと。
盛り付けの見せ方や、色の使い方は、和食・フレンチどちらの料理も優れていて、逆に中華やイタリアンには無い部分であると思う。
とにかく技術と知識量が高いのが共通する部分で、料理へのアイデアは豊富に出せる。
フレンチと和食の職人同士で、アイデアを出し合っている時は本当に楽しい時間だ。
料理人にとって、引き出しが多いという事は生命線な気がする。オリーブオイルとニンニクだけじゃ、確かに美味しいけど料理の幅は少ないのかなと。
和食・フレンチともに、料理へ対する意識の高さも同じように高いと感じた。
相対的にどちらの料理が優っているのか?ではなく、どちらも優れた料理だと心から思う。
どちらの料理を選ぶのが正しいのか
若い時は色々と考えるけど、結局どちらの料理を選んだ方が自分の為なのか?
答えは簡単だ。
「どちらの料理を選んでも、自分の為になる」
どの道を選ぼうとも、間違っていない努力をすれば必ず良い料理人になれる。そう断言できる。
ただし、間違った努力をしているといつまで経っても「良い料理人」には近づけないだろう。
通ってきた道だから分かるが、ずっとお店の中で同じ人間と同じ様に働いていると思考停止する時がある。
いつもの仕事をいつものようにこなしている自分に気づく。何も考えず、何も新しいものを生み出さず、ただ料理するという「作業」をしている自分に。
それを10年続けたらどうだろう?成長するだろうか?
「俺らは何十年も積み重ねてきたんだ」的な事を言いたがるおじさん調理人はよくいるが、「何十年も作業をしてきた」の間違えだ。
それは努力の方向が間違っている。
正しく努力を積み重ねる必要がある。それは料理人に限らず。
しっかりと自分の頭で考え、自分の力で生み出し、自分の考えで変化させていく。それこそが必要なスキルと努力。
「和食を選ぶのが正解」「フレンチを選ぶのが不正解」なのではなく、選んだ道を”正解”にするのか”不正解”にするのかは、自分次第だという事だ。
選ぶのが大事なのではなく、選んだ後が大事。選んだ道を、自分の力で「正解」にしたら良い。
僕は、和食を選んで「正解」だと今でも思っている。それは、「正解」にする努力をしてきたから。
富嶽はなぶさでは、そんな「場」を用意している。正しい努力が出来る「場」を。
ルーティンワークだけにならないように、自分を高められるように、自分の選んだ道を「正解」に出来るように。若い人にも挑戦する場面を沢山与える。
自分の作った料理をお客様に食べてもらえる緊張感や、お客様が美味しいと喜んでくれた時の嬉しさは何物にも代え難いよ。
一緒に働こうぜ!
という華麗なるステマでした~。
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未来の料理人、富嶽はなぶさで成長しようぜ!