料理は気持ちが大切って話
美味しい料理を作るには何が一番大切か?
- 味付け?
- 盛り付け?
- 素材?
- 下ごしらえ?
アルバイト時代を含めれば約18年ほど料理の世界に身を置いてきた僕だが、結局料理に一番大事な要素は「思い」と言う結論に至ったのでご報告を。
え?思い?
と驚かれるかもしれませんが「思い」です。一番大事な要素は。
例えば「自分の子供が初めて作ったスクランブルエッグ」
このスクランブルエッグに板前の出汁巻玉子は勝てるか?
答えはNOであろう。
そのスクランブルエッグには「思い」が込もっているから。
「お母さんの為に」という子供の「思い」
「あんなに小さかった息子が料理を作ってくれた」という親の「思い」
それぞれが「美味しさ」を作り出している。
そんな崇高なものに、僕らの小手先の料理は到底敵わないだろう。
「料理下手な彼氏が記念日に作ってくれたオムライス」だってそうだ。
チキンライスの味は薄くケチャップの味しかしない。グチャグチャの卵の上に「好き」と書かれたオムライス。
受け取る人によっては罰ゲームだ。
しかしながら彼女にとっては忘れられない料理。
Instagramにそのオムライスを投稿して「料理下手な〇〇くんのオムライス!愛されすぎてツライばくわら」とかって書くんだろう。それを見た友達は「なんだこれ?」って気持ちを押し殺して「いいね」を押すんだろう。
そんな正に「ばくわら」な状況でも、彼女にとっては最高の一皿。下手でも気持ちを込めているから、受け取る方は美味しさを感じる。
「空腹は最高のスパイス」とはよく言うが、「思いは極上のスパイス」なのだと思う。
同じ料理でも受け取る人によっては全く違うものになる
先ほど書いた彼氏が作ってくれたオムライス。「彼女」にとっては「たいめいけん」より美味しいオムライスではあるのだが、「たいめいけん」でそのオムライスが出てきたらクレームの嵐だ。
同じオムライスでも、反応は全然違う。
メイド喫茶で「萌え萌えキュンキュン」とか言われて、愛情らしき何かを送ったナポリタンを「超美味しい!」と感じる人も、「普通」と感じる人も、「マズイ」と感じる人もいる。それはその「萌え萌えキュンキュン」に愛情を感じているか感じていないかの違いなのだと思う。
以上を踏まえると、料理は1+1が必ずしも2になる訳ではない。
1+1が4になったり10になったり、はたまた0になったり、マイナスになったりする。
想像と違うものが出てくるから1+1がマイナスになったりするのだ。だから、お客さんが想像できるようにしておいてあげることが大切。
だから「思い」を伝えることが大事。
僕が常々思っている事は、「全員を満足させられる料理なんてこの世には存在しない」と言う事。100人が100人美味しかった!と言う料理なんて誰にも作れない。ジョエル・ロブションの料理だって、美味しくないと言う人はいる。必ず。
それは仕方のない事。
だって育ってきた環境が違うから。今はなきSMAPパイセンが言っていたように、好き嫌いは否めないのである。夏がダメだったりセロリが好きだったり嫌いだったりするんだから。
だから、自分の料理への思いを伝える必要がある。思いを伝えると、お客さんは更に「美味しい」と感じてくれるはず。
例えばもし僕が、旅館で使う野菜を一から作って、自分で育てて料理を作っていたとしよう。魚は自分が釣ってきたもの、もしくは自分で目利きをして仕入れてきたものだけを使っているとしよう。
その事を全く発信していなければ、お客さんからすれば普通の野菜だし普通の魚だ。しかしながらしっかりと発信して、その野菜、その魚への思いを綴っていれば、それを読んだお客さんの反応はまるで違うものになるだろう。
だから日々の発信が大事なのだ。
自分の発信で受け取り手の反応を変えてしまえば良いのだ。
お客さんをデザインしてしまえば良いのだ。
- 自分の料理へのこだわりを発信してますか?
- 素材への思いを綴ってますか?
魚のすり身を伸して #焼蒲鉾 を仕込む。最近はこういう仕事をする調理場が減ってしまってるようです。だって市販されてるから。
でもね手作りがやっぱり一番美味い。思いの込め方が違うから。
すなわち「愛情」という「美味さ」が足されてるんだよ、これには。
手作りの唐墨に巻きます。#はなぶさ旅館 pic.twitter.com/usAe9tAmjk— 「はな」陶芸の宿はなぶさ三代目 花房光宏 (@hanabusamitsu) 2018年3月12日
良いものを使えば分かってくれる。手間暇かければお客さんに伝わる。なんていう時代はもう終わり。破綻したのだ。
これからの料理人に求められるスキルは「美味しい料理を作る事」ではなく「料理の美味しさ・想いを伝える事」なのかもしれない。まぁ、美味しい料理を作ることが前提ですがね。